直流RL回路の解法 ー ラプラス変換を使った解き方ー

理論(電気回路,電磁気,電子回路等)
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こんにちは,ハヤシライスBLOGです!今回は直流RL回路をラプラス変換を使って解いていきます!

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直流RL回路

この記事では,図1のRL回路に,時刻0[s]で直流電源をつないだ場合の応答を,ラプラス変換を使って求めていきます!

図1 直流RL回路

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ラプラス変換とは

ラプラス変換とは,微分方程式を時間領域tではなく,周波数領域sで考えることで,微分方程式をより簡単に解くための手法です!

図2の通り,ラプラス変換すると,複雑な微分d/dtや積分∫dtが,s領域ではなんと単なるsの掛け算,割り算になります!つまり,時間領域tでは複雑な微分方程式であったものが,周波数領域sでは代数方程式になり,四則演算で解くことができます(^^)/

図2 ラプラス変換のメリット

図3に,一般的な微分方程式の解法とラプラス変換による計算の比較を示します! 一般的な微分方程式の解法では,同次方程式や非同次方程式などを微分を使って解くのに対し,ラプラス変換では代数的に解くので,計算が楽になります!なお,一般的な微分方程式の場合は,最後に回路の初期条件を考慮しますが,ラプラス変換では初期条件も含めて一気に解いてしまうという違いもあります(^^)/

なお,一般的な微分方程式の解法を使って,どうやって直流RL回路を解くのかが知りたい方は,以下の記事を参考にしてください(^^)

直流RL回路の解法 ー 1階線形(非同次)微分方程式の解法を使った解き方 ー
こんにちは,ハヤシライスBLOGです!今回は直流RL回路を一階線形(非同次)微分方程式の解法を使って解いていきます! 直流RL回路 図1のようなRL回路に,時刻0で直流電源をつないだ場合の応答を考えます!後程詳しく説明しますが,この回路...

図3 一般的な微分方程式による解法とラプラス変換の比較

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計算手順

ラプラス変換を使った直流RL回路の計算手順は以下の通りです!全部で3つのステップからなっています! 1つずつ順番に解説していきます(^^)/

図4 計算手順

Step1:微分方程式をラプラス変換しよう!

まず,回路方程式をラプラス変換します。図5の青枠で囲んだ公式を使ってラプラス変換すると,回路方程式は代数方程式になり,微分がなくなっているのが分かりますね! また,回路の初期条件「時刻0[s]での電流は0」についてもここで考えてしまいます!

図5 回路方程式をラプラス変換する

Step2:部分分数分解をしよう!

続いて,ラプラス逆変換できる形にするため,部分分数分解を行います!

部分分数分解の手順としては,
①:まずラプラス逆変換できる形を予め把握しておきます!この例で,1/s,1/(s+R./L)に分ければ,ラプラス逆変換できそうだというのが分かればよいです!なお,これにはある程度公式の暗記が必要ですが,ラプラス変換の公式はそこまで多くなく,また使う公式は大体いつも同じですから,覚えてしまいましょう(^^)/
②:次に,どうやったら①の逆変換できる形に式変形できるかを考えます!つまり,

1/(s(s+R/L))=□/sー○/(s+R/L)

を満たす□と○の係数が分かれば,元の式をラプラス逆変換できる形に変形できます!この□と○を求める方法については公式なんかもありますが,私のオススメは「とりあえず1/sー1/(s+R./L)を計算してみる」です!すると,これを計算した結果は元の式1/(s(s+R/L))のX倍(この例では,X=R/L)になりますので,1/sー1/(s+R./L)を計算した式の両辺を,逆にXで割れば,□と○の係数が分かります

図6 部分分数分解を行う

Step3:ラプラス逆変換しよう!

最後にラプラス逆変換して,最終的な解を求めましょう!ラプラス変換の公式を使って,最終的な解を簡単に求めることができます(^^)/
このように,ラプラス変換はある程度公式を覚えてしまえば,微分・積分の複雑な計算をすることなく,簡単に解にたどり着きます!そして,公式の数もそんなに多くない上に,普段使う公式も限られているので,比較的簡単に微分方程式を解くことができます(^^)/

図7 ラプラス逆変換を行う

直流RL回路の特徴

さて,直流RL回路の解法が分かったので,今度はその回路の特徴や性質についておさえましょう(^^)/

コイルの性質

ポイントは,ずばりコイルの性質です! コイルは,磁束の変化を嫌います。Φ=LIの式からも明らかなように,磁束は電流によって作られるので,結果的にコイルは電流の変化を嫌います!これは,ファラデーの電磁誘導の法則の式からも明らかで,コイルは磁束(電流)の変化を妨げる向きに起電力を発生し,なんとか磁束(電流)が変化するのを阻止しようとします(^^)/※

気を付けて欲しいのは,コイルはあくまでも磁束(電流)の「変化」を嫌うということです! 要するに,磁束や電流が変化する瞬間には,コイルは起電力を発生させて,磁束や電流が変化するのを思いっきり邪魔しようとしますが,一度変化して十分時間が経った後では,実際に磁束や電流が発生していても.コイルは起電力を発生させず,短絡状態となり一切邪魔はしません!

※)細かい点ですが,回路方程式を立てる時,一般的にコイルの起電力に-はつけません。これは,逆起電力と呼ばれて,あらかじめコイルの起電力の正の向きを,ファラデーの電磁誘導の法則と反対に定義しているからです。しかし,磁束(電流)の変化を妨げる向きに起電力を発生させるという本質は何も変わっていませんので,注意しましょう(^^)/

図8 コイルの性質

実際に直流RL回路の電流およびコイルの電圧のグラフを見てみましょう!スイッチをONにした直後と,スイッチをONにしてから十分時間が経った後を見ると,以下のようにこれまで述べてきたコイルの性質を確認することができます(^^)/

スイッチをONにした直後)
スイッチON直後には,コイルの磁束(電流)の変化を嫌う性質により,コイルには電流の変化を妨げる方向に大きな起電力が発生し(下図),実際に電流は即座に変化しません(上図)!

スイッチをONにしてから十分時間が経った後)
スイッチをONにして十分時間が経った後では,コイルに電流が流れていても(上図),コイルに起電力は発生せず,短絡状態となります(下図)!

図9 直流RL回路の電流とコイルの電圧

時定数 = 過渡現象の応答速度の指標

図9を見ると明らかなように,スイッチをONにした後の電流i(t)は,いきなり定常値のV/Rになるのではなく,定常値に向けて徐々に変化していきます。この現象のことを過渡現象と呼び,電流が定常値に向けて徐々に変化している状態を過渡状態と呼びます! そして,この過渡現象の応答速度の指標となるのが,時定数τです(^^)/

時定数τとは,定常値のおよそ63%に到達するまでの時間のことで,RL回路ではτ=L/Rで求まります!
実際に,t=L/Rを代入すると,i(L/R)=V/R*(1-1/e)となり,1/eがおよそ0.37なので,i(L/R)≒0.63*V/Rになります(^^)/ この時定数が短ければ,過渡現象はすぐに終わって,即座に定常値になります! 一方で,時定数が長ければ,過渡状態は長くなり,なかなか定常値になりません!

下のグラフは,Rの値を変えずに,Lだけを変えて時定数τを変えた例になります!Lが大きいほど,時定数τが長くなり,定常値に向けてゆっくりと変化しているのが分かりますね!コイルのLが大きくなって,電流の変化を妨げる力が強くなったので,電流の変化がゆっくりになったわけですね(^^)/

図10 時定数τ=L/Rを変化させた例

コイルに蓄積されるエネルギー

コイルに蓄積されるエネルギー=1/2*L*I^2とよく言いますが,この式はどこから出てくるのでしょうか?最後にこの式の出所を確認して,終わりましょう(^^)/

コイルに蓄積されるエネルギーは,ずばり瞬時電力p(t)(=コイルの起電力vL(t)×コイルを流れる電流i(t))を,スイッチを入れてから十分時間が経過する間で積分した値になります!つまり,瞬時電力のグラフの面積がコイルに蓄積されるエネルギーになります!実際に計算すると,電流の定常値Isを使って,1/2*L*Is^2という式になっているのが確認できますね!

図11 コイルに蓄積されるエネルギー

 

今回の記事はここまでです!この記事が,少しでも皆さんの役に立っていれば嬉しいです(^^)/

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