誘導機の原理について分かりやすく解説 ー誘導機編Part1ー

機械(同期機,誘導機,直流機,変圧器等)
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こんにちは,ハヤシライスBLOGです!
今回は誘導機の原理について,できるだけ分かりやすく解説します。よろしくお願いします!

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アラゴの円盤

教科書などで誘導機の原理を説明する時によく登場するのが,アラゴの円盤です(^^)/ 実際の誘導機はいずれもこのアラゴの円盤の原理を利用して,モータを回転させています!ここでは,まずアラゴの円盤の概要について説明します(^^)/

金属には磁石にくっつく金属とくっつかない金属がある

棒磁石を金属に近づけた時,すべての金属が磁石にくっつくわけではありません。図1のように,鉄・コバルト・ニッケル等は磁石にくっつきますが,銅・アルミニウム・銀などは磁石にくっきません!この事実はアラゴの円盤を理解する上で重要となりますので,まずは金属の中には磁石にくっつくものもあれば,くっつかないものもあるということをしっかりとおさえておきましょう(^^)/

図1 磁石にくっつく金属とくっつかない金属

アラゴの円盤の不思議

アラゴの円盤とは,銅などの磁石にくっつかない金属の円盤に棒磁石を近づけて回転させた時,磁石にくっつかないはずの金属の円盤が磁石につられて回転するというものです!円盤の金属が鉄であれば,鉄は磁石にくっつきますから円盤が棒磁石につられて回転しても何も不思議ではないのですが,円盤が磁石にくっつかない金属(例えば銅)の場合でも,円盤が棒磁石につられて回転してしまうのです!誘導機ではこのアラゴの円盤の不思議な性質を利用して,実際のモータを回転させています(^^)/

図2 アラゴの円盤の不思議

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誘導機の構造と理解のポイント

実際の誘導機の構造を図3に示します!誘導機の原理を理解する上で重要となるのは,固定子巻線と回転子巻線の働きを理解することです!固定子鉄心と回転子鉄心は,あくまで磁界の強さをパワーアップさせるための機器に過ぎません!

アラゴの円盤では,磁石を手で回すことで,円盤に磁界の変化を発生させて円盤を回転させていましたが,実際の誘導機では,当然磁石を手で回すようなことはしません!固定子巻線が外部の三相交流電源に接続されることで回転磁界という磁界を作り,この回転磁界が磁石を手で回すのと同じ役割を果たします!

また,アラゴの円盤では円盤が回転していましたが,実際の誘導機では回転子が回転します!そして,回転子と軸でつながったモータが一緒に回転するので,モータを回転させることができるというわけです(^^)/

図3 実際の誘導機の構造とアラゴの円盤との対応

誘導機の原理を理解するポイントは,以下の3つです!

Point1の回転磁界によって回転子に磁界の変化が生まれ,Point2,3によって回転磁界から回転子が力を受けて回転子とモータが回転します!キーワードとなる回転磁界,フレミングの右手の法則,フレミングの左手の法則について,以下で詳しく解説します(^^)/

図4 誘導機の原理を理解するポイント

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回転磁界とは

実際の誘導機では,図2のアラゴの円盤のように実際の磁石を回転させるのではなく,誘導機を三相交流の電源につなぐことで発生する回転磁界というものを利用して,磁石を回転させるのと同じ効果を得ています!そのため,まずは回転磁界というものについて説明します(^^)/

図5のように,ある1つのコイルに交流電源をつないでも,一方向(上下方向)にしか磁界を作ることができず,回転する磁界は作れません!

図5 単相交流電源の場合

一方で,図6のように各相3つのコイルを120度ずつずれた位置に配置し,それぞれに位相が120度ずつずれた三相交流電圧をかけた場合を考えてみましょう!

図6 三相交流電源

すると,図7のように,各相のコイルが作る磁界は特定の方向にしか磁界を作れませんが(赤,青,緑の矢印参照。これらは向きを反対にはできるが,それ以外の方向には磁界を作れない),3つのコイルが作る合成磁界(黒の矢印)は時計周りに回転していることが分かります!これが回転磁界と呼ばれるもので,実際の磁石を回転させるのと同じ役割を果たします(^^)/

図7 回転磁界(各相電源電圧の位相差が120度の場合)

なお,参考までに3つのコイルに位相が全く同じ交流電源をつないだ場合を見てみましょう!この場合には,仮にコイルを120度ずつずれた位置に配置しても,それぞれの磁界が相殺され,合成磁界は常に0になってしまいます!

図8 回転磁界は作れない(各相電源電圧の位相が同相の場合)

フレミングの右手の法則とは

ここでは,上記の回転磁界によってフレミングの右手の法則により,回転子巻線に起電力が発生して電流が流れることを説明します(^^)/

磁界の中を導体が移動する場合,導体には起電力が発生します!これが,フレミングの右手の法則と呼ばれるもので,導体に発生する起電力の向きは図9の向きになります(^^)/

図9 フレミングの右手の法則

例えば以下の図10のように磁界中で導体を回転させる場合,フレミングの右手の法則により,左側の導体には手前から奥の向きに,右側の導体には奥から手前の向きに起電力が発生します!

図10 磁界中を移動する導体には起電力が発生する

ここで,実際の誘導機について考えてみましょう!実際の誘導機では,図11のように回転磁界と導体(回転子巻線)の両方が回転するので,図10とは異なり磁界も一緒に回転します!

図11 回転磁界と回転子の動き(止まっている場所から見た場合)

図10とは異なり,図11でフレミングの右手の法則を考えようとすると,磁界と導体の両方が回転してしまうので,けっこう難しいというのが分かります!しかし,もし磁界を固定して回転子だけが動くものと考えることができれば,誘導機の場合も図10と同じように考えることができるので,話が簡単になりそうですよね?そのために磁界から見た導体の動きというものを考えてみましょう!イメージとしては,以下の通りです!

例えば図12の通り,時速50m/sの電車Bが時速10m/sの電車Aを見る場合を考えてみましょう!この場合,電車Bから見ると,当然電車B自身は止まって見え,電車Aは進行方向と反対向きに40m/sで動いて見えますよね?

図12 練習問題

これと同様に,反時計周りに回転磁界が1秒間に50回転,回転子が1秒間に10回転しているとすると(図11参照),回転磁界からみた導体は,回転方向とは反対の時計周りに1秒間に40回転しているように見えます!当然,回転磁界自身は止まって見えます!

図13 回転磁界と回転子の動き(回転磁界から見た場合)

上記のように回転磁界から見た回転子の動きを考えてあげることで,回転磁界と回転子の両方が回転していても,図10と同じように導体だけが動いていると考えることができます(^^)/

前置きが長くなりましたが,図13では磁界中を導体(回転子巻線)が回転しているので,フレミングの右手の法則により導体には起電力が発生します(^^)/この様子を図14に示します!

図14から明らかなように,誘導機では回転子巻線(導体)が磁界中を移動していますので,導体にはフレミングの右手の法則により起電力が発生します!そして,誘導機の各導体の端っこは基本的に短絡されて閉回路を作っていますので,フレミングの右手の法則により起電力が発生すると回転子の巻線には電流が流れます(^^)/

図14 回転子巻線に起電力が発生して電流が流れる理由

フレミングの左手の法則とは

次に,フレミングの右手の法則により回転子巻線に流れた電流が,今度はフレミングの左手の法則により回転磁界から力を受けて,回転子およびモータを回転させる点について説明します(^^)/

磁界の中を電流が流れる場合,電流は図15の向きに力を受けます(^^)/ これがフレミングの左手の法則と呼ばれるものです!

図15 フレミングの左手の法則

例えば以下の図16では,フレミングの左手の法則により,左側の導体には下向きの力が働き,右側の導体には上向きの力が働きます(^^)/

図16 フレミングの左手の法則の一例

おさらいですが,反時計周りに回転磁界が1秒間に50回転,回転子が1秒間に10回転しているとすると(図11参照),回転磁界からみた導体は,回転方向とは反対の時計周りに1秒間に40回転しているように見え,フレミングの右手の法則により回転子には起電力が発生し,電流が流れました(図14参照)!この流れた電流こそが,フレミングの左手の法則によって,回転磁界から力を受けます!
図14より,磁界の向きは右向きであり,電流の向きは左側の導体では手前から奥の向き,右側の導体では奥から手前の向きであるため,図17のようにフレミングの左手の法則により,左側の導体には下向きの力が働き,右側の導体には上向きの力が働きます!

ここで,力の向きに着目すると,力の向きは反時計回りになっており,回転磁界や回転子の実際の回転方向と同じ向きに力を受けていることが分かります!要するに誘導機は,このフレミングの左手の法則により回転子が回転磁界から受ける力を利用して,回転子とモータを回転させているのです!

図17 回転子が回転磁界から受ける力の向き

  • (参考)誘導機など回転機の基礎を0から勉強したい方にオススメの書籍

    今回の記事では,誘導機の原理を中心に解説していますが,実際に大学の講義の試験の問題や電験3種の試験を解くには,もっと幅広い知識が必要になります!以下の書籍は,誘導機などの回転機(直流機,誘導機,同期機)を0から勉強する初学者の方にとってもオススメの本です!沢山のイラストを用いて,誘導機を0から丁寧に説明しているだけでなく,変圧器や直流機、同期機についても丁寧に解説されています!また,付録の問題集では,電験3種の過去問が単元毎に整理されているので,理解度を確認するのに非常に便利です!著者も愛用していますので,是非読んでみてください(^^)/

今回の記事はここまでです!この記事が皆さんの役に少しでも立っていると嬉しいです(^^)/

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